2011年3月11日に発生した東日本大震災。その中でも特に、大津波による被害は今も人々の記憶に強く残っております。
「もし首都直下型地震が発生して、あのような津波が東京湾に押し寄せたら…」
住居や勤務地が東京にある方は、そのようなことを想像したこともあるかと思われます。
現在に至るまで様々な地震予知の研究はされておりますが、いつどこで、どのような地震が発生するのか、明確な予知をすることは難しいとされます。
その中で私達に出来ることの1つとして、「歴史」に学ぶことが挙げられます。
そこで本記事では、今から約100年前に関東で発生した「関東大震災」を紹介することで、東京湾に大津波が襲来する可能性を探りたいと思います。
関東大震災について
1923年9月1日11時58分、マグニチュード(M)7.9という巨大な大地震(関東大震災)が発生しました。
東京における大火災のイメージが強いため、東京の地震だと思っている人も多いかもしれませんが、震源域は神奈川県から房総沖まで、長さ130キロ、幅70キロの範囲にも及んだとされ、被害は神奈川県や千葉県南部と幅広い範囲に及んだとされています。
そして、関東大震災の死者・行方不明者は約10万5千人で、我が国の自然災害史上最悪でとされております。
そのうち、火災による死者は約9万2千人で圧倒的に多いですが、それ以外の約1万3千人のうち、強い揺れで住宅が全壊したことによる死者数は約1万1千人とこれまた非常に多いです。
この数は兵庫県南部地震による直接の死者数約5千5百人や、我が国で最大級の内陸直下地震と言われている1891(明治24)年の濃尾地震の7千2百人を遙かに上回るものとされております。
広報 ぼうさい No.39 2007/5
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/pdf/kouhou039_20-21.pdf
また、関東大震災において「火災による死者」が最も大きかった要因の一つとして、大震災が起きたとき、台風が新潟県付近にいたことが挙げられます。
その台風の影響を受けて関東地方には強い南風が吹いていたとされ、大規模な火災被害へと繋がったと考えられております。
関東大震災における津波被害について
では関東大震災における津波被害はどうだったのでしょうか。
相模湾沖が震源となったことで、相模湾沿岸部では5~6メートル、熱海では最大12メートルの津波が観測されるなど、湘南地域や伊豆半島東岸などが津波に襲われました。
5~6メートルの津波となりますと、木造家屋が全壊・流出し、人は津波による流れに巻き込まれるレベルとなります。
詳細は本以下の記事をご参照ください。
一方で東京湾におきましては、津波による大きな被害はなかったとされております。
その理由の一つとして、東京湾では構造的に大津波は発生しにくい、ということが挙げられます。
以下に、東京都江東区のHPにおける「江東区における津波の影響について」を引用し、東京湾の構造について説明します。
東京湾は外洋からの入り口が狭く、中で広がっている形状であることから、外からの津波が湾内に進むにつれて増幅するような現象は起こりにくいと分析されています。
また、東京湾及び河川流域において、高潮対策として防潮堤や水門、陸こうなどが整備されていることから、江東区内に大きな津波が押し寄せて来る可能性は極めて低いと考えられます。
江東区HP 防災情報
https://www.city.koto.lg.jp/057101/bosai/bosai-top/taiou/guide_7068_7085.html
江東区には、お台場・豊洲を始めとする数多くの湾岸エリアがございます。
同HPにおきまして、「大地震発生などの非常時においては、区内の水門を閉鎖することにより、荒川・隅田川からの影響を遮断し、津波の流入を防ぐ」との防災対策の紹介もあり、地形の面からも、防災対策の面からも、東京湾で大規模な津波の発生は起こりにくい、ということが伺えます。
津波対策について
では、「東京湾では大津波は発生しにくい」ということで対策は何も必要ないでしょうか?
答えはもちろん「否」です。
と申しますのも、もし首都直下型地震のように震源地がより近い場所で発生すれば、現在想定している以上の自然災害が発生するリスクはあるからです。
また東日本大震災発生前は、国の中央防災会議においては、南海トラフでの巨大地震(東海・東南海・南海地震)が発生した場合、最大1.5メートル程度の津波が東京湾内湾に来襲すると想定していましたが、東日本大震災ではそれを上回る潮位が観測されており、評価の見直しが必要ではないか、との見方もございます。
(東日本大震災発生時、東京晴海の最大波で 1.3メートル、横須賀、横浜では 1.6メートル、木更津港で2.83メートル、千葉中央港で1.87メートル、船橋葛南港で 2.40メートル、と東京湾沿岸各地で津波が計測されております)
一般財団法人日本開発構想研究所レポート
http://www.ued.or.jp/report/pdf/no9/05.pdf
従来の考え方に固執することなく、最悪のケースを想定しながら対策を講じていくことが、地震大国である日本に住む私達に必要です。
まとめ
ここまで、関東大震災における被害状況から、東京湾における大津波襲来の可能性についてお伝えしてきました。
東京湾は構造的な面では大津波は発生しにくい地形なのかもしれませんが、昨今の自然災害の様子ですと今までの常識は通用しない危険性もございます。
いざという時には冷静かつ迅速に対応出来るよう、日頃より防災に対する意識を高めていきましょう。