「巨大地震が発生すると大津波が発生する危険性がある」こう聞いて疑問に思われる方は少ないでしょう。
しかし、「小さな地震でも大津波が発生する危険性がある」と聞くと、多くの方は戸惑いを覚えるのではないかと思います。
この記事では、小さな地震でも大津波が発生する危険性があること、そして津波発生のメカニズムと対策について解説します。
揺れの小さい地震でも津波が発生することがある
地震速報が流れた際、多くの方は「どこで発生したのか?」「地震の大きさは?」を確認し、地震の大きさが小さければ、そこで興味が薄れてしまう方も多いでしょう。
実際に多くのケースでは、「この地震による津波の心配はありません」というアナウンスが続きますので、「小さな地震」から「津波」を連想される方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
しかし、日本におきまして「震度2から3」程度の小さな地震が大津波を引き起こし、多大な被害を与えた事例があります。
その地震の名前は「明治三陸津波」。
明治29(1896)年6月15日、午後8時ごろ三陸沖で発生した地震に伴う大規模な津波により、三陸沿岸を中心に死者約2万2千人、流出、全半壊家屋1万戸以上という我が国津波災害史上最大の被害が発生しました[注1]。
[注1]内閣府防災情報のページ 報告書(1896 明治三陸地震津波)
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1896_meiji_sanriku_jishintsunami/index.html
この明治三陸津波については、「津波地震」と呼ばれる特殊なメカニズムで発生したと言われてます。
通常、大きな津波が発生する時は、大きな揺れも伴います。しかし「津波地震」では、断層が通常よりゆっくりとずれて、人に感じられる揺れが小さくても、発生する津波の規模が大きくなります。
当時の記録によると、地震の揺れは、緩やかな、長く続く震動ではあったのですが、人々はいつものこととさして気に留めることはなかった様子で、いざ津波が近づいてきた際には既に手遅れで多くの方が犠牲となりました。
この教訓から学ぶことは、「小さな地震だから津波は大丈夫」と安易に考えず、地震発生時には津波にも十分注意することが大切です。
地震発生に伴う津波発生のメカニズム
そもそも地震発生時に、津波はどのようにして発生するのでしょうか。
海底下で大きな地震が発生すると、断層運動により海底が隆起もしくは沈降します。これに伴って海面が変動し、大きな波となって四方八方に伝播するものが津波です。
また津波は、海が深いほど速く伝わる性質があり、沖合いではジェット機に匹敵する速さで伝わります。
逆に、水深が浅くなるほど速度が遅くなるため、津波が陸地に近づくにつれ、減速した波の前方部に後方部が追いつくことで、波は高くなります。
陸地に近付いて減速したと言っても、車の速度(時速36km)ほどのスピードを維持しておりますので、走って逃げられるようなものではありません。
[注2]国土交通省 気象庁 津波発生と伝播のしくみ
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/tsunami/generation.html
従いましていかに早く高台に避難出来るかどうか、が生死を分けるポイントになりかねません。
津波警報が発表されましたら、真っ先に避難をするよう心がけましょう。
津波注意報・警報の仕組みについて
地震速報時に併せて発信される「津波注意報・警報」。
気象庁では、地震の発生に伴って津波による災害の発生が予想される場合、津波の高さに応じて「大津波警報」「津波警報」「津波注意報」を発表しています。
こちらの基準は東日本大震災の教訓を踏まえて、 平成25年(2013年)3月7日より 運用方法が改善されてます。
具体的な改善としまして、マグニチュード8を超えるような巨大地震の場合は、地震の規模を正確に把握するまでに時間がかかるため、第1報では予想される津波の高さを、大津波警報のときは「巨大」、津波警報のときは「高い」という簡潔な言葉で発表します。
端的に分かりやすいメッセージを伝えることで、避難の必要性を訴えます。
引用:国土交通省 気象庁 津波警報・注意報、津波情報、津波予報について
特に、「巨大」という言葉で大津波警報が発表された時は、東日本大震災クラスの非常事態であるため、ただちにできる限り高いところへ避難することを覚えておいてください。
まとめ
ここまで、津波に関する様々な情報を紹介しました。
東日本大震災から9年もの歳月が流れ、津波の恐ろしさの記憶が風化されてきているのでは、との懸念の声も聞かれます。
しかし「天災は忘れた頃にやってくる」との格言もあるように、いつ地震による津波が発生してもおかしくありません。
有事の際には冷静かつ迅速に対応出来るよう、日頃より防災に対する意識を高めていきましょう。